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覚え書き その2


 ハードカバー『破壊王の剣』別冊付録に載せたシリーズに関してのエッセイを一部再録し、項目を加えて大幅に加筆訂正し、お届けします。                              Kindle版発行に際し、改訂しました(2014.1.22)     

Millennium Larentia《ラレンティアシリーズ》本編5部作『黄金の守護者』、『赤い月の神殿』、『薄闇の女王』、『蒼き炎の名』、『覇者の王国』と外伝『破壊王の剣』の元の版は最初、1991年に角川スニーカー文庫から発行されました。
その後も加筆修正を加え、私家本のハードカバーやアンソロジーなどにまとめられ、今回Kindleで発売することになりました。
執筆当時や文庫出版後の反響などをまじえた覚え書きです。



★《闇の王子》について★  キャラ談義その1です

この人は外伝『破壊王の剣』で主役クラスの活躍をしているのですが、本編では2巻め前半に登場して、さしたる活躍もせずに退場してしまいます。
もともと、本編の第2巻『赤い月の神殿』に登場したのが先で、ウレッタともども、過去の元気な頃の話を書いてみたいと思い、浮かんだのが外伝『破壊王の剣』です。外伝が先に出版されましたが、書いたのは本編が先でした。
だから本編で影が薄いのは仕方ないのですが、やはりあらためて読むと気の毒のような気がします。
ときどき現れるウレッタの亡霊にからんで登場する予定もあったのですが、本筋を追うのがせいいっぱいで、書けませんでした。

初期の設定で、《闇の王子》の役どころは、本編の主人公の影の立場のはずでした。生まれや立場がほとんど同じでありながら、すべて影にまわった先祖の役割だったわけです。《ルー》が《闇の王子》に目をつけて自分の傀儡にしようともくろんだのはそのためでした。
外伝でリゲルが《ルー》のもくろみを無にしなければ、《闇の王子》は本編でも立派に傀儡として活躍したかもしれません。
「情けない」と言われる現在の状況より、悪役として華々しく活躍したほうがひょっとしてよかったかもと、たまに思いかえしたりします。この人、ファンだという人も多くて、けっこう情けないキャラなのに人気があります。力があるのに情けないところがいいのでしょうか。

『破壊王の剣』の100年後のエピソードとして『真紅の封印』を出したのですが、そこで何人かの方から質問をいただきました。いったい《闇の王子》はいつ子供を作ったのか。
これは当然来る質問だと思ってました。《闇の王子》の子孫の話は『破壊王』を書いていたときから構想があったもので、あとになって突発的に思いついたものではありません。
あえて露骨な描写はさけて、ほのめかし程度にしておいたので上のような疑問が出てきたわけですが、本人に意識はなくてその間にうんぬんということです。その手のことは一度だけではなく、以前から何度もあったと。
子供は《闇の王子》が遠征中に極秘出産され、そのまま侍女の手によって闇に葬られかけたところを助かり、親切な人によって育てられたというところでしょうか。
《闇の王子》が失踪して何十年かたち、後継者がいない国が乱れたところで、出生の秘密を知ったその子供が落とし胤だと名のりをあげたわけです。《闇の王子》自身はその頃に地下にこもって鬱々としていたので(こういうところが情けないと言われる原因かもしれませんが)、百年後にしかその事実を知らなかったのです。
(全般的に本編も外伝も、スニーカー文庫という出版媒体を考慮して、エロティックな描写は自主的にカットしたりして控えました。当時、小五の男の子からファンレターをもらったこともあるので、あのときとしては仕方ない判断だったと思います)

《闇の王子》が活躍した時代は500年代から600年代の 《闇の王子》と《闇の貴婦人》の時代です。
前半部だけ仕上げてある五王戦争とカルナ建都の外伝 『白い月の翼(仮)』 に登場する予定で、今度こそ活躍できるかもしれません。


★リゲルについて★   キャラ談義その2です。

この人は本編の中で位置づけはなく、外伝『破壊王の剣』のために突風のごとく現れたキャラでした。
小柄ですばしっこく賢いキャラが描きたかったのだと思います。外伝はとくに派手な剣豪対決がやりたくて、立ちあいのシーンに力が入りました。
イメージモデルがしっかり存在していて、今となってはふれないほうがいいと思いますが、当時惚れていた某さんをイメージして外見描写をしました。性格設定は全然違いますし、あくまでも当時の彼ですので、あまり気にしないで読みながしてください。
こうやってイメージモデルを書いたりすると「イメージが壊れるからやめてくれ」というご意見もいただきますが、反対に「ぜひ知りたい、教えてほしい」とのご意見もありまして、どちらも理解できます。
作者としては、もし映画化されたら、誰をキャスティングしてほしいかという発想から、イメージ固めの過程でよく考えます。古今東西、国籍、時代を問わず、自由に配役をしていくのも楽しい作業です。
もちろん、イメージは読んだ方それぞれの中にありますから、裏話のひとつとして受けとめてくださるとうれしいです。

金と銀の色ちがいの目という設定は本編でも外伝でもよく出てくるんですが、もともとは白いペルシャ猫のオッドアイからヒントを得ました。ほかにも、デビット・ボウイ氏が、若い頃の喧嘩のせいで片方の目の色が変わってしまったというエピソードも加味しました。
最近ではある外国の女優がきれいな褐色と青のオッドアイで、見ほれました。彼女をイメージモデルにTFTMシリーズ短編『海の艦隊』を書きました。


★ミカルについて★  キャラ談義その3です。

《闇の王子》と並んで、予想より活躍の場がなかったキャラとして、本編の一巻冒頭から登場するミカルがいます。そのまま一巻めの勢いで活躍するのかと思ったら、三巻以降、出番が少なくなってしまいました。
局面が拡大して、なかなか活躍の場がなかったというのが理由ですが、もうひとつには──。

初期の初期の構想では、ミカルの位置づけはヒロインでした。つまり主役の相手役。まだぼんやりとした構想しか浮かんでない頃はその予定だったのです。
けれど書きはじめてみると、物語の展開は意外と早く、他の強力なキャラがで出てきて、まだ年齢が11歳だったせいもあり、旅の相棒程度にとどまってしまいました。
キャラが動き出して、どうもそういう方向には行かないという主張をはじめたせいもあります。当初はもう少し、何年にもわたる物語のつもりで、年齢差(18歳と11歳)もかまわなかったのですが、実際に始まってみると本当にその予定で進めたらロリコンになる(笑)。それはさけたい。
というわけで、あらゆる要素が反対し、結果的に本編におけるミカルの位置づけがあいまいになってしまい、登場回数がへってしまったというわけです。

やっと書くことができた「幻の第六巻」にあたる『神々の果ての扉』では、当初の予定に近くヒロイン的活躍をします。この先が彼女の本領発揮となるので、第四巻で予言されたとおり立派な女王さまとなった姿もいずれ披露できると思います。


★ティアスについて★  キャラ談義その4です。

この人も派手な登場をしながら、やや後半かすんでしまったかなという反省があります。なんといっても女王さまのキャラが強烈だったから、その影に隠れておとなしくなってしまった。なんだか不遇なキャラ談義になってきましたが……。

登場するまで、女王さまがあんなすごい方だったとは作者自身も予想してませんでした。このあたりは私もいち読者として、話の行方を見守っておりました。2巻の終わりから、3巻の前半が、今読みかえしてもひきつけられるものがあります。真打ち登場みたいなわくわく感ですね。
出版時の読者の方からの手紙では、「女王さま大嫌い」と大不評がつづき、「ティアスをいじめて許せん」と罵詈雑言がすごかったのですが、当時の一部の反感もわからないでもありません。他の耽美系作品とのかねあいもあって、ああいう強烈な女性キャラというのは抵抗があったのではないかと予想します。
作者はすごく好きですし、ある意味真の主役ではないかと思ってます。

それでティアスですけど、1巻の後半から2巻めの彼はけっこう色っぽくていいですね。そのあとになると使命に忠実になったせいか立場に縛られていたのか、妙に生真面目になってしまいました。女王さまがあれなので、そうなるしかなかったかと思います。
彼は彼女でもあって、種族的特徴をひきついで両性体なので、つきつめていくと性同一障害的な悩みをかかえるキャラとなってしまいそうです。
《Chronicle of GoldenAge》でもひきつづき、名前と位置づけが変わって登場しますが、メインキャラ的な活躍機会はなくなっていく傾向にあります。