作者インタビュー その2


ペーパーバック版『暁光の刻』下巻に収録した作者特別インタビューを一部紹介します。
本編のネタバレが多少ありますので、ご注意ください。(2023.10)                               

『神々の果ての扉』下巻に続く特別インタビューです。

『神々の果ての扉』のすぐ後の話ですね。
 そうなんですけど、『神々』は本編五部作の実質第六部の位置づけで、『暁光』は次のシリーズの始まりで第一世代の前のゼロ世代編になります。
 執筆順も、第一世代編を半分くらい書いてから、年代をさかのぼって『暁光』を書きました。二○○○年代に入ってからです。

子供世代からですか?
 いきなり第一世代で前のことを回想しようかと思ったけど、やはり譲位と婚約の話はやらなきゃいけないなと。
 それで「前哨戦」の部分を短編みたいに書いたんですが、要は「雲隠」を書くのがつらかったというか、初代女王さまと別れがたかったというか、難渋しました。

物語としては美味しいところかと思うのですが。
 いちおう本編の冒頭、十一歳で登場したミカルちゃんが成長し、ヒロインとして活躍するのは感慨深いですけど、初代女王さまを考えると暗くなるので、つとめてコミカルに明るく書くようにしました。
 だからゲーム感覚で女王候補選抜戦みたいな設定にして、難関隠れキャラを攻略するという感じに。ひとつでも選択肢を間違えると攻略失敗みたいな。
 そんな感じで展開していったから、なんとか「雲隠」までたどりついて書けたかな。

ヒロイン昇格はめでたいですね、よかった
 一時は無理かもと思ってたけど、こちらも公約をはたせてよかったです。
 ロリにならずにすんだし、わりと自然に昇格してくれた。
 初期設定では、甥と一度くっついてから再婚するパターンの構想もあったのですが、書いてみたら全然そんな展開にはならなかった。それはありえないよねという感じで。
 この子は小さいときから根が明るくて賢くて、とても書いてて気持ちいいキャラでした。
 深刻な中の清涼剤的な役回りで、「雲隠」編であるのに、この子の陽性のおかげでとても前向きに希望の持てる流れで書けました。
 初代女王さまもこれなら許してくれるかなと。分身はまた何人か登場するので、お楽しみに。

Chronicle of GoldenAgeシリーズはどんなきっかけで書き始めたのですか?
 前のインタビューでMillennium Larentiaは本格的なエピック・ファンタジーの形で神に近い存在を書きたかったと話しましたが、Chronicle of GoldenAgeは神なき時代の話で、ファンタジーというより建国の物語、何代にわたる年代記を書きたくて始めました。
 ローマ帝国の建国から発展の本を読んでいて、やりたくなったのを覚えてます。
 もうひとつは寿命の違う因子が入った特異な家系を書きたかった。
 まだ第二世代のなかばまでで、そのあたりの要素が大きく出てないので、詳しくはまた後に。

言葉づかいを直す訓練のシーンがありますけど、口調はキャラによっていろいろですよね。使いわけの基準はありますか?
 基本的にどこかにある向こうの世界の話を、日本語に翻訳して書いてるという感じでやってます。
 英語なら、アクセントや訛りで階級がわかるけど、日本語は人称や語尾や敬語の使い方で印象が変わりますよね。
 一人称、二人称がいろいろあって、「わたし」「あたし」「ぼく」「おれ」などでまったくキャラのイメージが変わってしまうから、その人の身分や環境などでふさわしいものを選んでます。
 『暁光』で「ぞっこん」「でれでれ」という単語を入れるときは迷ったのですが、下町言葉の例として翻訳してみるとこれかなという形で使いました。

Chronicle of GoldenAgeについてはまた次の機会にお尋ねしますね。

            インタビュアー・沙羅