作者インタビュー その3


ペーパーバック版『曇りなき光の影』に収録した作者特別インタビューを一部紹介します。
本編のネタバレが多少ありますので、ご注意ください。(2023.10)                               

『神々の果ての扉上巻』『暁光の刻下巻』に続くインタビューです。

■Chronicle of GoldenAgeのシリーズの執筆はいつ頃から?
 記録を調べてみたら、2006年頃から少しずつ構成を練って、『白い月の森』を書いてから、短編として出した『仮面劇』の続きを2007年から始め、本編第六部的位置づけの『神々の果ての扉』をなんとか完成。
 それからChronicle of GoldenAgeの構成を系図から始め、第一世代編『守護の翼黄金の檻』『真昼の陽光宵の薄闇』と書いて、やはり譲位と婚約は書かないといけないなと思い『暁光の刻』を書いたという順ですね。
 第一世代の続き『鷹と湖の宴』やこの巻『曇りなき光の影』以降は2008年あたりに書いていたみたいです。記憶が定かではない。

■前のインタビューではローマ建国をヒントにしたとか?
 都市計画はそうです。七つの丘に建国して、周囲の他民族を従え、浴場や劇場や街道をつくりながら拡大していく過程がおもしろくて、構想のヒントにしました。
 前のインタビューでは詳しく話せなかったのですが、寿命の違う種族が入った特殊な家系を描きたかった。
 
■寿命の違う種族が入った特殊な家系とは?
 もともと寿命の違う種族を登場させてたのですが、その設定を深掘りしていくと家系図的におもしろいとふくらませていきました。
 それで最初に浮かんだのが、第二世代の後半部なんですけど、まだそこまで書いてないのではっきりと言えない。すごく寿命の長い守護天使系が二重に入った特殊な家系があり、のちにその末裔が奪いあいになるという流れが軸になります。
 先の話なので、これくらいにしておきます。

■最初に浮かんだのが第二世代後半?
 そうなんです。長寿系が二重に入った奇跡の双子の話が浮かび、そこから前後に家系図を広げていった。
 とりあえずゼロ世代になる本編五部作のメインキャラはみんな子孫を作ってあげようと系図を書き、あとは主要国の王家の血統はひとつ残そうとつなげていった感じ。
 家系図を書くのがとにかく楽しい。半分、趣味のようなもの。

■なにかと話題になるティアス君に子孫がいるのは驚いた。
 彼もだけど、なかなか子孫を残しそうもない人も工夫して家系図に入れるのも楽しかったです。ティアス君というかレアンドル殿だけど、もともと本編のときに彼女はいたから、まあ人妻だけど、ひとりくらい子孫を残すのはなんとかなりました。

■孫までいるからびっくりしたという感想がいくつかありましたね。
 隠し子はひとりだけど、孫はたくさんいて、重要な位置づけの家系になって、ひ孫まですごく活躍します。
 もうひとつ王家の家系を維持するため、すごく無理な子作りをさせたところがあって、申しわけなく思ってます。どうしてもこの家系が欲しかったので……すみません。

ああ、あれですね。もうひとりの隠し子ですね。
 わかりますよね。
 だから『暁光の刻』の最初から早めに伏線を張り、アグライア王家の末裔を出して絡ませたんです。がんばってみたけど無理があるから、コメディパートみたいになってしまった。
 よほどのことがないとありえないと思ったけど、直系の最後のひとりだからどうしてもアグライア王家の純血系を残したくて、末裔どうしで子孫をつくらせた。
 アグライア王国復興編でかなり前面に出てきます。

■誰でもひとつは隙があるというか。
 ネタに使われたり、脅迫の種にされたり、まあ、ごめんなさいです。
 貴重な血統の、重要な家系ですので、なくてはならない流れでした……と、あいまいに謝っておきます。
 ずっと後になる第四世代から五世代になる『湖上の黄金』にも登場する重要な家系のひとつになります。

■第一世代で好きなエピソードは?
 好きというか、一番書いたあとでずっしりときたのは《風神の事変》の前後ですね。
 『神々の果ての扉』で登場した○○君が、立派な王様になり、崩御するまで描いて、大河ドラマを終えたような喪失感がありました。一生をしっかり時の流れとともに描いたのはあまりない経験でした。
 あと第一世代の始まりの書き出しはけっこう好き。
 ゼロ世代がどうなっているかわからないところから、やや性格悪めの少年の視点から描くのが楽しかった。

■性格の悪いキャラがお好き?
 近くにいてほしくないけど、書くのは面白いですね。
 人間ばなれした人外ロイヤルファミリーの、唯一の普通の人ですし、まあ歪んでいくのも仕方ないかと。
 この人の家系は特殊家系からはじかれた普通の人家系という感じで、独自の道を行きます。

            インタビュアー・沙羅